建築基準法で定められている耐震設計法の理念は、建物の耐用年数内に1,2度遭遇する中規模地震では、「多少の建物被害はやむを得ないとしても、建物の倒壊等人命に被害が生じない」、建物の耐用年数内に1度遭遇するかどうかの大地震では、「建物は大破しても人命の安全は確保」といった考え方であります。人々の生活が豊かになり、社会が複雑かつ高度化した現在においては、単に人命の保全ということでは許されない状況であると考えられます。耐震構造では、建物の倒壊は免れたとしても、家具の転倒や設備機器類の破損、コンピューター機器やデータの破損は防ぐことができません。これまでは建物が倒壊さえしなければ良いという程度の考え方でよかったかもしれませんが、これからは建物の種類、重要度などによっては内装や家具、設備機器などの耐震安全性について十分な検討がなされるべきであります。
耐震構造 | 制震構造 | 免震構造 | |
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模式図 | |||
構造の仕組み | 柱や梁の強度を高め建物全体で地震の力に対抗する構造 | 建物各所に制震装置を設置し、地震の揺れを低減させる構造 | 建物の基礎部分などに設置された積層ゴムや滑り支承などの免震装置で建物に伝わる地震力を低減する構造 |
地震動軽減の特徴 | 基本的には地震力をそのまま受ける構造。上階層ほど地震力が増幅されます。大地震時には建物の揺れが大きく家具の転倒、非構造部材の脱落、コンピューター機器やデータの破損等が懸念されます。 | 躯体の変形で効果が表れる仕組みのため、地震時の低減性能は免震ほど顕著ではありません。超高層事務所ビルのほとんどがこの制震構造を採用しています。超高層マンションにも多く採用されています。 | 地震時の低減に関しては最も優れた構造。地震時の揺れはゆっくりとした平行移動に変換され、人命の確保はもちろん、家具の転倒、設備機器、コンピューター機器の破損を防ぐことが可能。震災による企業活動の停止が妨げられます。最近の大型病院はほとんどが免震構造。40階を超えるような超高層マンションにも採用されています。 |
装置メンテナンス等 | 装置が必要ないため特別なメンテナンスは不要 | 制震装置の日常のメンテナンスは不要だが、中規模以上の地震が発生した場合には点検が必要。大規模地震に遭遇した場合には制震装置の交換が必要になることもあります。 | 免震装置の定期点検及び臨時点検が必要となります。中規模以上の地震が発生した場合には、目視点検が必要。 |
コスト | 小 | 中 | 大 |